「最近、親の物忘れがひどくなってきた気がする…」「同じことを何度も聞いてくる…」
そんな変化に気づいた時、どうすればいいのか戸惑う家族の方は多いと思います。
今回は在宅訪問経験約20年の現役薬剤師として、認知症の基本的な知識から受診の流れ・症状の進行・介護保険・家族の向き合い方まで持論も交えて解説します。
まずはかかりつけ医に相談を
「認知症かもしれない」と感じたら、まずはかかりつけ医に相談してください。些細なことでも構いません。治療開始は早ければ早いほど良いので、様子を見すぎないことが大切です。
かかりつけ医が認知症の専門科でなければ、脳神経内科・脳神経外科・精神科に紹介状を書いてもらうのが一般的な流れです。最近は「もの忘れ外来」としてわかりやすく掲げている病院も増えています。
「病院に連れて行こうとすると本人が嫌がる」というケースも多いですが、「健康診断の一環として」「念のため診てもらおう」という形で誘うと受け入れてもらいやすいことがあります。
認知症の症状:中核症状とBPSDの2重構造
認知症の症状は大きく「中核症状」と「BPSD(行動・心理症状)」の2つに分けられます。
ここは非常に重要なポイントで、誤解されていることが多い部分です。
中核症状とは:脳の障害が直接反映された症状で、ほぼすべての認知症患者に出現します。記憶障害・見当識障害・実行機能障害・失語・失行などが含まれます。薬物治療を行っていても徐々に進行していきます。
BPSDとは:不安・抑うつ・幻覚・妄想・興奮・徘徊・異食・昼夜逆転など多様な症状が含まれます。環境や本人の性格が反映されやすく、出現する場合もそうでない場合もあります。薬や環境調整でコントロールできる可能性があります。
「認知症は治らない病気だからどうしようもない」と思っている家族の方が多いのですが、中核症状は進行するとしても、BPSDは薬や環境調整でコントロールできることがあります。困っている症状がBPSDであれば、諦めずに医師・薬剤師に相談してみてください。

MCI(軽度認知障害)とは
MCIとは認知症の一歩手前の状態のことです。記憶力などが低下しているものの、日常生活には支障がない段階です。
MCIの段階で発見して適切な治療・生活改善を行うことで、その後の認知症発症を遅らせることができる可能性があります。だからこそ早めの受診が大切なのです。
認知症の中核症状の進行を表したものでFAST(アルツハイマー型認知症の進行ステージ)というものがあります。MCIはFASTではステージ3に該当します。FASTについては次のセクションで説明します。
認知症の進行と介護保険について
FASTは認知症(アルツハイマー型)の進行をステージ1〜7で示したものです。ステージが上がるほど介助が必要な場面が増えていきます。
▼ 下の図をご参照ください

介護保険は認知症と診断されれば必ず使えるというものではありません。身の回りのことが全て自分でできるような方は介護サービスが必要ないからです。
ただしデイサービスなど進行予防に役立つサービスもあります。「まだ元気だから」と思っていても、一度相談してみる価値はあります。介護保険の申請は市区町村の窓口や地域包括支援センターに相談してみてください。
家族としての向き合い方
現場で見ていると、家族の向き合い方は当然ながら様々です。「認知症は病気であって、決して困らせようとしているわけではない」とよく言われますが、実際にはそう簡単に受け入れられないし感情的になるのは当然だと思います。
ここからは持論ですが、割り切る必要はないと思います。でも上手くいかない時は必ず誰かに頼ってほしいと思います。
医療関係者は近いようで遠い存在と感じられるかもしれません。そのような方には「認知症カフェ」に一度顔を出してみてはいかがでしょうか。認知症カフェには同じように認知症の家族を介護している方たちが集まり、有益な情報共有をしたり、愚痴をこぼし合ったりしています。
認知症カフェの詳細はお住まいの市区町村の窓口や地域包括支援センター、ケアマネジャーなどに確認してみて下さい。
まとめ
✅ 「おかしいな」と感じたらまずかかりつけ医に相談する
✅ 中核症状は進行するがBPSDは薬でコントロールできる可能性がある
✅ MCIの段階での早期治療が大切
✅ 介護保険は早めに相談しておく
✅ 一人で抱え込まず認知症カフェなどを活用する
認知症はここまでお伝えしたとおり現代の医療では残念ながら完治することのない病気です。だからこそ早期治療により進行を遅らせることはとても重要です。家族だけでは支えきれないような時は「早く知っておけばよかった」とならないよう助けを求めて下さい。
この記事で一人でも多くの方が救われたと感じられたら幸いです。

