実況中継!ポリファーマシーとは?多剤併用の危険性と対策を薬剤師が解説

介護と薬

「薬が増えてきた気がする…」「何種類も飲んでいるけど本当に全部必要?」と感じたことはありませんか?

年齢とともに薬の種類が増えていくことは珍しくありません。でも薬が増えれば増えるほど、様々なリスクが高まることをご存知でしょうか。

今回はポリファーマシーの問題と対策についてお伝えします。

ポリファーマシーとは、複数の薬を同時に服用している状態のことです。日本語では「多剤服用」とも呼ばれます。

問題となる薬剤数の目安は6種類以上です。6種類以上の服薬により副作用の発現率が一気に膨れ上がることがわかっています。

日頃から6種類以上の薬剤が処方されている方を非常に多く見かけます。高血圧・糖尿病・脂質異常症・骨粗鬆症など、複数の慢性疾患を抱える高齢者では薬の種類が増えやすい傾向にあります。

ただし薬の種類が多いことが全て問題というわけではありません。大切なのは「本当に必要な薬かどうか」を定期的に見直すことです。

【副作用の判断が難しくなる】
副作用は薬の種類が増えるほど発現しやすくなります。しかし薬の種類が多すぎると「副作用なのか加齢による症状なのか」の判断が難しくなるという問題があります。

【飲み忘れ・飲み間違いが増える】
薬の種類が増えるほど飲み忘れや飲み間違いは確実に多くなります。服薬管理が複雑になるほど、正しく飲み続けることが難しくなります。

【医療費の増加】
薬の種類が増えれば当然お薬代も増えます。病気の悩みだけでなく経済的な負担も増えることになります。

【QOL(生活の質)の低下】
副作用・飲み忘れ・経済的負担など複合的な問題からQOLが低下しやすくなります。薬を飲むことが生活の妨げになってしまっては本末転倒です。

ポリファーマシーの原因のひとつに「処方カスケード」があります。

処方カスケードとは、薬の副作用に対してさらに薬が処方されてしまう連鎖のことです。

わかりやすい例を挙げると、高齢者の多くが服用している高血圧の治療薬。その副作用として血圧の過度な低下によるめまい・ふらつきが起こることがあります。患者さんが医師に「最近めまいが気になる」と訴えた際に「ではめまいの薬を処方します」となると薬の種類が増える結果となります。

これが処方カスケードです。

処方医や薬剤師がはじめに副作用を疑っていれば処方カスケードは防ぐことができます。しかし薬の種類が多くなるほど「副作用なのか加齢による症状なのか」の判断は難しくなるため、完全に防ぐことは難しいこともあります。

ポリファーマシー対策は薬剤師に求められている重要な業務のひとつです。

在宅訪問経験が長いことから高齢者の処方内容を多くみてきたため、「この薬は本当に必要なのか?」を日頃から意識するようにしています。実際に減薬提案を行い薬を減らすことができた事例は多数あります。

ただし現場で働いていて感じることは、このポリファーマシー対策が積極的に行われているかというとそうではないことが多いという現実です。他の業務で手が回らないこともありますが減薬提案は医師の了承が必要であることが大きなハードルになっています。

ただ副作用が疑われる患者さんを後回しにする理由はありません。相談される前に薬剤師から積極的に声がけをすることが薬剤師の使命だと感じます。

日頃よく見かける、減らせる可能性が高い薬をいくつかご紹介します。あくまで一例ですので、自己判断での中止は絶対にしないでください。必ず医師・薬剤師に相談した上で判断してください。

【胃薬(PPI・プロトンポンプ阻害薬)】
ポリファーマシーの患者さんが服用している可能性が最も高い薬のひとつです。抗血小板薬(血液サラサラの薬)や鎮痛剤を服用している場合、または胃痛・胸焼けなどの症状がある場合は併用が好ましいですが、そうでなければ中止を検討できる場合があります。

【睡眠薬】
睡眠薬は服用を続けていくうちに効果が弱まり、増量・追加となりやすいものの一つです。また、高齢者が転倒する原因にもなります。現在は依存性が少なく体への負担が比較的少ない薬剤が多く出てきています。いきなり中止するのではなく、少しずつ切り替えていくことで減薬が期待できます。

【ビタミンB製剤(アリナミン・メチコバールなど)】
疲れや痺れの治療として処方されることが多い薬です。ただし加齢とともに見られる症状でもあるため、薬をやめても症状の悪化につながらないことが多いです。漫然と処方され続けているケースをよく見かけます。

【痛み止め】
毎日、何年も飲み続けている方がいます。続けているから痛みが抑えられているなら必要ですが、過去に一時的な痛みで処方されたものがそのまま処方され続けているケースもよく見かけます。
また痛み止めの種類にもよりますが多くの場合、動いた時の痛み(膝や腰など)にはあまり有効ではありません。じっとしていても痛みを感じるような場合は飲んだ方が良いですが動いた時だけの痛みであれば中止しても変わらないこともあります。

【減薬のための第一歩「一度やめてみる」】
私が患者さんによく伝える減薬のための第一歩は「とりあえず一度やめてみること」です。

「飲んでいるから調子が良い」→「本当は飲まなくても変わらないのでは?」と疑うことが大切です。それを証明するには一度やめてみることが最も効果的です。

ただし自己判断での中止は絶対にしないでください。必ず医師と相談の上で行ってください。

⚠️ 注意:減薬の対象となりやすいのは痺れや痛みなど自覚症状のある薬剤です。血圧の薬や糖尿病の薬など自覚症状がない薬の自己判断での中止は非常に危険ですので絶対にやめましょう。

ポリファーマシーは患者さん自身でも対策できることがあります。

✅ お薬手帳を活用する:複数の医療機関を受診している場合、全ての薬を一元管理する
✅ 定期的に薬の見直しを相談する:「この薬まだ必要ですか?」と医師・薬剤師に聞いてみる
✅ 体調の変化を記録する:新しい症状が出たら薬の副作用の可能性も考えて相談する
✅ 自己判断で薬をやめない:急に服用をやめると症状が悪化することがあるため必ず相談する

「薬が多すぎる気がする」と感じたら、まずは薬剤師に相談してみてください。

✅ ポリファーマシーとは6種類以上の多剤服用のこと
✅ 6種類以上で副作用の発現率が急増する
✅ 処方カスケードが薬を増やす原因になることがある
✅ 副作用・飲み忘れ・医療費・QOL低下などの問題がある
✅ 薬剤師に相談することで減薬できる場合がある

薬は正しく使えば強い味方ですが、必要最小限にとどめることが大切です。「薬が増えてきた」「もしかしたら副作用かも」と感じたら一人で悩まずに薬剤師に相談してください。あなたの薬が本当に必要かどうか、一緒に考えてもらいましょう。

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