「この薬、粉砕してもいいですか?」
介護施設や在宅の現場からよく問い合わせを受ける質問のひとつです。嚥下機能の低下により、薬を飲み込めない方への対応として粉砕を検討されることが多いですが、すべての薬が粉砕できるわけではありません。
今回は在宅訪問経験約20年の現役薬剤師として、薬の粉砕可否の判断ポイントと対応方法をお伝えします。
なぜ薬の粉砕が必要になるのか
粉砕を希望される主な理由は以下の通りです。
✅ 嚥下機能の低下により錠剤が飲めなくなった
✅ 服薬拒否がある(粉砕して食事に混ぜるなどの対応のため)
✅ 口の中に薬が残ってしまう
特に高齢者や認知症の方では嚥下機能の低下や拒否が見られやすく、介護施設・在宅の現場では粉砕の必要性が生じることが多いです。
粉砕可否の判断ポイント
薬を粉砕できるかどうかを判断する際に確認すべきポイントは以下の4つです。
✅ 腸溶錠かどうか
✅ 徐放錠かどうか
✅ 吸湿性(湿気への安定性)
✅ 光への安定性
これらを確認せずに粉砕すると薬の効果が変わったり、副作用のリスクが高まることがあります。必ず薬剤師に確認してから粉砕してください。
徐放錠は粉砕NG!見分け方を知っておこう
徐放錠とは、成分がゆっくり溶け出すように設計された錠剤です。1日の服薬回数を減らすために徐放錠が使われることが多く、最近の薬には徐放錠が非常に多いです。
徐放錠を粉砕すると成分が一度に溶け出してしまい、効果が過剰になったり副作用が出るリスクがあります。基本的に粉砕は不可能です。
【徐放錠の見分け方】
薬の名前に徐放錠と付いていたり、アルファベットが付いていることが多いです。
SR・CR・R・L などの表記がある薬は徐放錠の可能性が高いので注意してください。
徐放錠の場合は同成分の徐放錠ではないものか、類似薬への変更が基本となります。必ず医師・薬剤師に相談してください。
腸溶錠の粉砕問題と解決策
腸溶錠とは、胃では溶けずに腸で溶けるように設計された錠剤です。粉砕すると胃で溶けてしまい効果が得られなくなったり、胃を荒らすリスクがあります。
粉砕の問題が多いのが腸溶錠である胃薬(PPI:プロトンポンプ阻害薬)です。服用患者が多いことからよく問題になります。
【解決策】
腸溶錠でも以下の方法で対応できることが多いです。
✅ 口腔内崩壊錠(OD錠)への変更:水なしで口の中で溶けるタイプに変更する
✅ 脱カプセル:カプセルの中の顆粒を取り出して服用する(顆粒自体は腸溶性のため粉砕しない)
いずれも医師・薬剤師に相談の上で対応してください。
吸湿性・光安定性への対応
粉砕可能な薬でも吸湿性や光への安定性によって取り扱いに注意が必要なものがあります。
【吸湿性について】
薬剤によって差があります。
・2週間〜1ヶ月程度なら粉砕しても大丈夫なものもある
・1日でベタベタになってしまうものもある
すぐにベタベタになるような吸湿性の高い薬は服薬の直前に粉砕してもらうようにします。
【光への安定性について】
光に不安定な薬は服薬直前に粉砕するか、粉砕したものを遮光袋に入れて保管します。
いずれの場合もあらかじめ粉砕して保管する場合は遮光・防湿を行うことが基本です。
粉砕前に必ず薬剤師に確認を
薬の粉砕可否の確認ポイントをまとめると:
✅ 腸溶錠:粉砕NG・OD錠への変更や脱カプセルで対応
✅ 徐放錠:粉砕NG・名前にSR・CR・R・Lがある薬は要注意
✅ 吸湿性が高い薬:服薬直前に粉砕する
✅ 光に不安定な薬:服薬直前に粉砕または遮光袋で保管
「この薬、粉砕してもいいかな?」と思ったらまず薬剤師に相談してください。自己判断での粉砕は思わぬ副作用や効果の変化につながることがあります。介護施設・在宅の現場での薬の管理についても、いつでも薬剤師に声をかけてください。

