「コレステロールが高いと言われた」「中性脂肪が高いと言われたけど薬は出なかった…」
健康診断で脂質の数値を指摘されることは多いですが、正確に理解している方は意外と少ないように感じます。
今回は、脂質異常症の基礎知識から治療の考え方・現場で感じることまでお伝えします。
脂質異常症とは?3つの主な指標
脂質異常症とは血液中の脂質の濃度が基準値を外れた状態のことです。以前は「高脂血症」と呼ばれていましたが、HDLコレステロールは「低い」ことも問題になるため「脂質異常症」という名称に変更されました。
主な検査項目と診断基準(空腹時採血):
LDLコレステロール(悪玉コレステロール)
・140mg/dL以上 → 高LDLコレステロール血症
・動脈硬化を直接進行させる最重要の指標
HDLコレステロール(善玉コレステロール)
・40mg/dL未満 → 低HDLコレステロール血症
・低いことが問題(高いほど良い)
TG(トリグリセリド・中性脂肪)
・空腹時採血:150mg/dL以上 → 高トリグリセリド血症
・随時採血:175mg/dL以上(2022年版ガイドラインで新たに設定)
※これらは診断基準であり、すぐに薬物療法が必要というわけではありません。
【補足:non-HDLコレステロールについて】
non-HDLコレステロール(総コレステロール-HDL)という指標もあり、LDL以外の動脈硬化を引き起こす脂質全体を反映します。採血データに含まれていない場合もありますが、より正確なリスク評価に役立つ指標として注目されています。
HDLコレステロール(善玉コレステロール)を増やすには
HDLは低いことが問題となります。HDLを増やすために最もエビデンスレベルが高いのは運動です。
✅ 有酸素運動(ウォーキング・水泳など)週3日以上・1日30分以上
✅ 禁煙
✅ 内臓脂肪の減少(適正体重の維持)
なぜ脂質異常症は危険なのか
脂質異常症は高血圧・糖尿病と並ぶいわゆる「サイレントキラー」です。自覚症状がないまま動脈硬化が進行するためです。
高LDLコレステロール血症は動脈硬化を直接進行させ、心筋梗塞・脳梗塞・狭心症などの重大な心血管疾患につながります。
高TG血症についても、冠動脈疾患(心臓の表面を覆う重要な血管)との関連が多く報告されています。また高度の高TG血症(1000mg/dL以上)では急性膵炎を起こす可能性があり、特に注意が必要です。
症状がないからといって放置することで、ある日突然重大な疾患を引き起こすことがあります。定期的な検査と適切な管理が重要です。
「健康に気をつけているのに数値が良くない」理由
現場でよく見かけるのが「食事に気をつけているのに」「運動もしているのに」と健康志向であるにもかかわらず検査値が良くなかった方です。
これは体質や遺伝的な要因が大きく関係しているためです。痩せていてもコレステロールが高い方は珍しくありません。
特に「家族性高コレステロール血症」という遺伝性の疾患では、生活習慣に関係なくLDLコレステロールが著しく高くなります。若年でも心筋梗塞や狭心症を発症しやすいため早期発見・積極的な治療介入が重要です。
「生活習慣が原因ではないのか」と落ち込む必要はありません。高いことで様々な疾患につながる重要な項目なので食事や運動で改善がなければ薬で下げることも大切な選択肢です。
TGが高いのに薬が出なかった理由
「中性脂肪がかなり高かったのに薬が出なかった」という方から不安の声を聞くことがあります。
TGは食事の影響を強く受けます。前日に脂っこいものをたくさん食べたり飲み会があったりすると正確な数値が出ないことがあります。そのため異常値=すぐに薬物療法とはならないことが多いです。
過去のデータも参考にしながら高い値が続いた場合に薬物療法の適応となります。
TGは以前は多少高くてもあまり重要視されていませんでしたが、近年では見直されてきています。2022年版のガイドラインでは随時採血(食後など)でも基準値が新たに設定されました。空腹時だけでなく食後も高い状態が続くことが心血管リスクになることがわかってきたためです。
心配な方はまず正確な空腹時採血で数値を確認することが大切です。
治療の考え方〜薬を飲む必要があるのか〜
脂質異常症の治療は生活習慣の改善が基本です。食事・運動・禁煙などで改善が見込める場合はまず生活習慣の改善から始めます。
ただし生活習慣を改善しても数値が改善しない場合や、もともと心血管リスクが高い方(糖尿病・高血圧・喫煙・家族歴など)では薬物療法が必要になります。
LDLコレステロールの管理目標値はリスクによって異なります。
・通常:140mg/dL未満
・高リスク(糖尿病・慢性腎臓病など):120mg/dL未満
・非常に高リスク(心筋梗塞・脳梗塞の既往など):70mg/dL未満
薬を飲むことに抵抗を感じる方も多いですが、多くの方は薬をきちんと飲めば数値は下がります。正常値を維持できれば心筋梗塞・脳梗塞などの大きな病気を予防することができます。「薬を飲むこと」が健康を維持する行動のひとつです。
現場でよく見かける「薬の飲み忘れ・自己中断」
脂質異常症の治療で現場でよく見かけるのが薬の飲み忘れや自己判断による服薬中止です。
その主な理由は「自覚症状がないから」です。
高血圧・糖尿病・脂質異常症はいずれも「サイレントキラー」と呼ばれる通り、数値が高くても体に何も感じません。そのため「調子が良いから飲まなくていい」「数値が下がったからもういいか」と自己判断で中止してしまう方が多いです。
しかしこれは非常に危険です。薬で数値が下がっているのは薬が効いているからであって、薬をやめれば数値は再び上昇します。
飲み忘れたらすぐに数値が上昇するわけではありませんが、症状がなくても薬を飲み続けることが大切です。
まとめ|数値を正しく理解して向き合いましょう
✅ 脂質異常症はLDL・HDL・TGの3つの指標で診断される
✅ 自覚症状がないまま動脈硬化が進行する「サイレントキラー」
✅ 体質・遺伝的要因が大きいため健康志向でも高くなることがある
✅ TGは食事の影響を受けやすいため一度の高値だけで判断しない
✅ 生活習慣の改善で効果がなければ薬物療法も大切な選択肢
脂質異常症と診断されても悲観する必要はありません。適切な治療と生活習慣の改善で数値はコントロールできます。脂質の数値が気になる方、薬について不安な方はいつでも薬剤師に相談してください。

