【この記事でわかること】
✅ 高齢者が熱中症になりやすい理由は暑さを感じにくいことにある
✅ 水だけの補給では体液は回復しない
✅ 利尿剤・抗コリン薬は熱中症リスクを高める
✅ 抗コリン薬による熱中症は水分を摂っていても起こる
✅ 経口補水液をうまく活用することが予防のカギ
「まだそんなに暑くないから大丈夫」——そう思っていても、気づかないうちに熱中症になってしまうのが高齢者の怖いところです。
熱中症は屋外だけで起こるものではありません。エアコンをつけていない室内でも発症します。また利尿剤や抗コリン薬など、特定の薬を飲んでいる方は特に注意が必要です。
この記事では高齢者の熱中症対策と正しい水分補給の方法をわかりやすく解説します。
熱中症とは・なぜ起こるのか
熱中症とは、高温多湿な環境に置かれたときに体温調節がうまくできなくなり、体内に熱がこもることで起こる病気です。めまい・脱力感・倦怠感・吐き気などの症状が現れ、重篤な場合には意識障害や死に至るケースもあります。
人間は暑い環境では発汗することで体の熱を放散して体温を調節しています。しかし何らかの原因でこの体温調節機能がうまく働かなくなると熱中症を引き起こします。
水だけでは不十分な理由
「水をたくさん飲んでいるから大丈夫」と思っていませんか?実は水だけの補給では体液はなかなか回復しません。
汗は血液から作られています。そのため汗には水分だけでなく血液中の電解質(ナトリウムなど)も含まれています。脱水状態のときは体から水分と電解質の両方が失われている状態です。
この状態で水だけを摂取すると体内の電解質濃度が薄まってしまいます。すると体は電解質濃度を保とうとして、余分な水分を尿として体外に排出しようとします。結果として水だけを飲んでも体液はなかなか回復しないのです。
水分補給には水ではなく電解質を含んだ飲み物を選ぶことが重要です。
高齢者が熱中症になりやすい理由
高齢者が熱中症になりやすい理由は加齢による身体機能の変化にあります。
✅ 皮膚感覚の低下により暑さを感じにくくなる
✅ 基礎代謝の減少により体温調節機能が低下する
✅ 血液循環の悪化により熱を放散しにくくなる
✅ 体内の水分量が若い人より少ない
✅ のどの渇きを感じにくくなる

在宅訪問をしていると、真夏でもエアコンをつけていない・むしろ暖房をつけているという高齢者の方に出会うことがあります。暑さを感じにくくなっているため本人は全く気づいていません。訪問するこちらが熱中症になってしまうのではないかという場面も少なくありません。高齢者の熱中症は本人が気づかないうちに進行することが多いため、家族や周囲の方が気を配ることがとても重要です。
熱中症リスクを上げる薬
実は特定の薬を飲んでいる方は熱中症のリスクが高まります。薬を服用している高齢者は特に注意が必要です。
🔴 利尿剤
利尿剤は体内の余分な水分を尿として排出する薬です。服用していると水分・塩分が抜けやすくなるため脱水傾向になり、熱中症のリスクが上がります。高血圧・心不全・むくみの治療で広く使われているため、服用している方も多い薬です。
夏場は特にこまめな水分補給を心がけてください。
🟡 抗コリン薬
抗コリン薬はうつ病・パーキンソン病・過活動膀胱など様々な治療で使われる薬です。抗コリン作用が働くと汗をかきにくくなります。汗をかかないと体に熱がこもりやすくなり体温が上昇するため熱中症のリスクが上がります。
抗コリン薬による熱中症には特徴があります。通常の熱中症は「脱水症→熱中症」という流れで起こりますが、抗コリン薬による熱中症は「熱中症→脱水症」という逆の流れになります。つまり水分を十分に摂っていても熱中症になる可能性があるという点で非常に注意が必要です。

利尿剤を服用している方への熱中症の注意喚起は定番ですが、抗コリン薬を服用している方への指導は忘れがちです。特に過活動膀胱の治療をしている方はトイレに行きたくないからと水分を控えることが多く、さらにリスクが高まります。抗コリン薬による熱中症は水分を摂っていても起こることがあるため、周囲の方も含めて注意が必要です。
正しい水分補給の方法
高齢者への水分補給指導で大切なのは「こまめに少しずつ」です。
✅ 喉が渇いたと感じる前に飲む(喉の渇きを感じにくいため)
✅ 一気に大量に飲まない(吸収されにくくなるため)
✅ 一口程度をこまめに摂る
✅ 起床時・就寝前・入浴前後は必ず水分を摂る
✅ 水だけでなく電解質を含む飲み物を選ぶ
また飲料水を選ぶときは成分表示をチェックして食塩相当量(100mL中0.1〜0.2g)が含まれているものを選ぶのがポイントです。
経口補水液の選び方
外出や屋外作業の予定がある日、体調が優れない日などは経口補水液の活用がおすすめです。
🔴 OS-1(大塚製薬)
医療現場でも使われている経口補水液の定番です。電解質バランスが最適化されており、脱水症状の改善に効果的です。味が薄いと感じる方もいますが、体が脱水状態のときは飲みやすく感じます。
🟡 アクアソリタ(味の素)
OS-1と同様に電解質を含む経口補水液です。OS-1より飲みやすいと感じる方も多く、日常的な水分補給にも使いやすいタイプです。
⚠️ スポーツドリンク(ポカリスエット・アクエリアスなど)との違い
スポーツドリンクは経口補水液より糖分が多く電解質が少ない傾向があります。予防目的や軽い運動時には適していますが、脱水症状が出ている場合は経口補水液の方が適しています。
🧊 アイススラリーについて
氷よりも流動性があり水よりも冷却能力が高い「アイススラリー(シャーベット状の飲料)」
コンビニなどでも見かけたことがあるかと思います。炎天下での作業時や運動前後のクールダウンに効果的で、効率よく体の深部体温を下げることができます。
ポカリスエットやリポビタンのアイススラリー商品が市販されていますので、屋外での作業が多い方はぜひ試してみてください。

夏場になると在宅患者さんを中心に熱中症・脱水症の注意喚起を行っています。高齢者にとって水分摂取は苦行になることも多いので、こまめに少しずつ摂るようにお伝えしています。外出や屋外作業の予定がある日はOS-1やアクアソリタのような経口補水液をおすすめすることが多いです。
まとめ
高齢者の熱中症は本人が気づかないうちに進行することが多い点が特に危険です。家族や周囲の方が気を配ることが重要です。
✅ 高齢者は暑さを感じにくく熱中症になりやすい
✅ 水だけでは体液は回復しない・電解質補給が重要
✅ 利尿剤を飲んでいる方は脱水・熱中症リスクが高い
✅ 抗コリン薬による熱中症は水分を摂っていても起こる
✅ こまめに少しずつ水分を摂ることが予防のカギ
✅ 屋外作業の日は経口補水液を活用する
薬の飲み合わせや水分補給について不安な点があればかかりつけの薬剤師に気軽に相談してください。

熱中症は予防が最大の対策です。特に薬を複数飲んでいる高齢者の方は、かかりつけの薬剤師に相談してみてください。お薬手帳を持参していただければ熱中症リスクのある薬が含まれていないか確認できます😊

