胃ろうを提案されたら、どうしますか?——「延命治療」という誤解を解く

介護と薬

この記事でわかること

  • 胃ろうを選ぶ方が減ってきている理由
  • 「胃ろう=延命治療」が誤解である理由
  • 経鼻胃管・胃ろう・中心静脈栄養の違い
  • 選択の目安となる簡易フローチャート
  • 提案されたときに確認しておきたいこと

医師から胃ろうの造設を提案されたとき、多くのご家族が「延命治療」という言葉を思い浮かべ、大きな葛藤を抱えます。「管から栄養を入れるくらいなら」とためらう方も少なくありません。

今回は、胃ろうについて誤解されがちな点と、他の栄養摂取方法との違いについてお伝えします。

胃ろうを選ぶ人は、実は減ってきています

胃ろうの造設件数は、2010年前後をピークに減少傾向にあります。ある調査では、2011年に約7,000件だった胃ろう造設術が、2014年には約4,500件まで減少したと報告されています。背景には、2014年度の診療報酬改定で胃ろう造設の点数が引き下げられたことや、日本老年医学会が終末期医療に関するガイドラインを示したことなどが影響していると考えられています。在宅の現場でも、以前に比べて積極的な延命治療を望まれるご家族は少なくなってきたと感じています。

「胃ろう=延命治療」は、必ずしも正しくありません

「管から栄養を入れるくらいなら」と、胃ろうを延命治療そのものと捉えて拒否感を持つ方は少なくありません。しかし、胃ろうは必ずしも延命だけを目的とした処置ではなく、栄養を摂取するための方法の一つという位置づけです。実際に胃ろうを造設したことで栄養状態が改善し、体力を取り戻して、口からの食事を再開できるようになったという方もいます。

Ph.そら
Ph.そら

胃ろうになったら一生口から食べられなくなる、というのも誤解です。誤嚥のリスクに配慮しながら、好きなものを少量楽しんでいる方もいます。

実際の経過は

私自身の経験では、胃ろうを造設したことを後悔しているというお話を、患者さんやご家族から聞いたことはありません。多くの場合、造設後に栄養状態が改善し、以前より元気になったと感じるケースを見てきました。

ただし、これはあくまで私自身が見てきた範囲での実感です。進行した認知症など、状態によっては、胃ろうが必ずしも生命予後の改善につながらないという指摘をする専門家もおり、この点については医療者の間でも意見が分かれています。栄養摂取の方法として何が最適かは、病状や見通しによって大きく異なるため、一律に「良い」「悪い」と言い切れるものではありません。

経鼻胃管・胃ろう・中心静脈栄養の違い

口から十分な栄養を摂れない場合の選択肢には、胃ろう以外にも次のようなものがあります。

【経鼻胃管】
鼻からチューブを通して胃まで届ける方法です。手術が不要で、すぐに始められる一方、チューブが不快に感じられたり、自己抜去してしまったりすることもあり、主に短期間(数週間程度)の使用に向いています。

【胃ろう】
内視鏡を使った処置で、お腹に小さな穴を開けてチューブを通します。経鼻胃管に比べて違和感が少なく、長期間の栄養管理に向いています。

【中心静脈栄養】
腸を使わず、点滴で栄養を補う方法です。消化管が使えない場合に選択されますが、感染のリスクが高く、管理も複雑になるため、胃ろうよりもハードルが高い方法とされています。

選択の目安(簡易フローチャート)

①消化管(腸)は機能していますか?

→機能していない場合:中心静脈栄養が中心の選択肢になります

→機能している場合:②へ

②栄養サポートが必要な期間はどのくらいですか?

→短期間(数週間程度)が見込まれる場合:経鼻胃管

→長期間(それ以上)が見込まれる場合:胃ろう

※あくまで一般的な目安です。実際の選択は、病状や本人・ご家族の意向を踏まえ、医療チームと相談しながら決めることになります。

提案されたときに、確認しておきたいこと

医師から胃ろうを提案されたときは、次のような点を確認してみてください。

✅なぜ今、この方法が提案されているのか(目的)
✅どのくらいの期間を見込んでいるのか
✅口からの食事を再開できる可能性はあるのか
✅もし造設した後に本人・家族の意向が変わったら、外すことはできるのか

医師以外のスタッフからも説明を受けたり、メリット・デメリットについて丁寧に説明を受けたりした家族の方が、後々の満足度が高いという調査結果もあります。

薬剤師にできること

胃ろうを造設したあとの服薬管理について、あらかじめ相談しておくことも可能です。以前の記事でもお伝えした通り、胃ろうからの薬の投与には「簡易懸濁法」という、チューブに詰まりにくい方法があります。造設を検討している段階から、こうした実務面の情報を知っておくと、決断の材料の一つになるかもしれません。
→胃ろうからの薬、「すりつぶす」より簡単で安全な方法があります

Ph.そら
Ph.そら

一度決めたら後戻りできない、というものではありません。分からないことは、遠慮なく聞いてみてください。

よくある疑問

胃ろうにすると、寝たきりになるのですか?

胃ろうそのものが寝たきりを引き起こすわけではありません。栄養状態が改善することで、むしろ活動性が上がるケースもあります。

一度胃ろうを造設したら、外せませんか?

状態が改善し、口からの食事で十分な栄養が摂れるようになれば、胃ろうを閉鎖することも可能です。

家族の間で意見が分かれてしまったら、どうすればいいですか?

このような場面は珍しくありません。以前の記事でもお伝えした通り、あらかじめACP(人生会議)として本人の意思を共有できていれば、判断の助けになります。すでに意見が分かれている場合は、急いで結論を出そうとせず、医療チームを交えて、それぞれの思いを丁寧に話し合う時間を持つことをおすすめします。
→ACP(人生会議)はなぜ上手くいかないのか?現場で見た「家族間の温度差」という壁

まとめ

✅胃ろうを選ぶ方は、以前に比べて減少傾向にあります
✅胃ろうは必ずしも延命治療そのものではなく、栄養摂取方法の一つです
✅経鼻胃管・胃ろう・中心静脈栄養は、それぞれ向いている期間や管理の負担が異なります
✅提案されたときは、目的や見通しを確認し、医療チームと相談しながら決めましょう

Ph.そら
Ph.そら

胃ろうを提案されて悩んだときは、一人で決めずに、遠慮なく医療チームに疑問をぶつけてみてください。

【参考文献】
・健康保険組合連合会「『胃ろう』を勧められたとき」
https://www.kenporen.com/health-column/hanareteKurasu/vol_75/
・日本経済研究センター「終末期の事前指示書 胃瘻で延命?自然な看取り?」
https://www.jcer.or.jp/blog/babazonoakira20200108.html
・国民健康保険中央会「胃ろう造設者の実態把握並びに効果的ケアに関する調査研究事業」
https://www.kokushinkyo.or.jp/Portals/0/Report-houkokusyo/H24/H24胃ろうのケア_報告書.pdf

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