※本記事は2026年5月時点の情報をもとに作成しています。制度の詳細は今後変更される可能性があります。
2027年3月を目途に、市販薬と同じ成分の処方薬(OTC類似薬)に追加負担が発生する新たな制度が導入される方向で議論が進んでいます。
対象となるのは胃薬・花粉症の薬・風邪薬・湿布などの外用薬など、日常的によく処方される薬が多く含まれています。今回は現役薬剤師として、この制度についてわかりやすく解説しながら、現場目線で気になることをお伝えします。
OTC類似薬の制度見直しとは?
OTC類似薬とは、ドラッグストアなどで処方箋なしに購入できる市販薬と同じ成分・効能を持つ処方薬のことです。現在は医療保険が適用されており、患者は1〜3割の自己負担で済んでいます。
今回の制度見直しのポイント:
✅ 完全な保険適用除外は見送り
✅ 薬剤費の1/4(25%)を「特別料金」として追加徴収する仕組みを導入
✅ 対象は77成分・約1100品目
✅ 2027年3月からの実施を目指す
✅ 小児・がん・難病患者・低所得者などは特別料金の適用除外
制度見直しの目的:
① 医療用医薬品の給付を受ける患者と市販薬で対応している患者との公平性の確保
② 現役世代の保険料負担の軽減
疑問①:対象外の同効薬に処方が変わるだけでは?
例えば花粉症の薬を考えてみましょう。OTC類似薬に該当する成分(フェキソフェナジンなど)は追加負担の対象になります。でも同じ花粉症の薬でもOTC類似薬に該当しない成分(ビラスチン・オロパタジンなど)は対象外です。
患者さんの自己負担を考えた医師が対象外の薬を処方するようになれば、制度の趣旨である医療費削減の効果は限定的になるのではないでしょうか。
薬局現場が直面する3つの課題
【課題①:患者への説明負担が増える】
「なぜ今回はいつもより高いのですか?」という患者さんからの質問に毎回丁寧に答える必要があります。対象・対象外が混在する中で、わかりやすく説明するのは想像以上に手間がかかります。
【課題②:会計が複雑になる】
同じ処方でも対象薬と対象外薬が混在することで、会計計算が複雑になります。レセコン(調剤報酬請求コンピュータ)の対応も必要になり、現場の事務負担が増加します。
【課題③:薬局から医師に対象外薬への変更を提案する流れが生まれる】
説明負担・会計の複雑化を避けるために、薬局側が対象外の同効薬への変更を医師に提案するという流れが十分起こりうると思います。
結果的に処方が対象外の薬に切り替わり、疑問①で挙げた「処方が変わるだけ」という現象がさらに加速する可能性があります。制度の抜け道になりうるのではないでしょうか。
疑問②:受診控えによる重症化リスク
この制度にはセルフメディケーションを推進する意図があります。確かに軽い症状なら市販薬で十分なケースもあります。
でも「風邪かな」と思っていたら実は肺炎だった、「花粉症かな」と思っていたら別の疾患だったということは珍しくありません。追加負担を嫌って受診を控えることが重症化につながるリスクは否定できません。
疑問③:追加負担額が少なすぎて抑止力にならないのでは?
対象となる薬の多くは数十円〜数百円の薬剤費です。その1/4の追加負担となれば、実際の追加負担額は数十円程度になるケースも多いと思われます。
この程度の追加負担で患者の受診行動が変わるのでしょうか。医療費削減という目的を達成するなら、もう少し踏み込んだ設計が必要ではないかと感じます。ただしそれは患者負担の増加につながるというジレンマもあります。
制度の行方を注視していきます
今回の制度見直しは持続可能な医療保険制度を維持するために必要な改革という側面があります。その方向性は理解できます。
詳細が決まり次第、このブログでもお伝えします。
持続可能な医療保険制度のために改革が必要なことは理解しています。ただ現場の実態を踏まえた制度設計であってほしいと切に願います。

