認知症になってもインスリンは続ける?薬を変える選択肢と続けるときの注意点

介護と薬

この記事でわかること

  • 糖尿病と認知症の関係
  • 認知症の方のインスリン治療で、まず検討すること
  • インスリン継続が必要な場合の対応
  • 体調不良時(シックデイ)の注意点
  • 薬剤師にできること

糖尿病の治療でインスリン注射を続けている方が、認知症と診断された、あるいは認知症が疑われるようになったとき、注射をどう続けていくかは大きな悩みになります。

今回は、そうした場面で薬剤師としてどのように考え、対応しているかについてお伝えします。

糖尿病と認知症には、実は深い関係がある

福岡県久山町で長年続けられている疫学研究では、糖尿病のある方はそうでない方と比べて、アルツハイマー型認知症の発症リスクが2.1倍、脳血管性認知症の発症リスクも1.6〜2.2倍高いことが報告されています。つまり、糖尿病でインスリン治療を続けている方が、認知症を合併するケースは、決して珍しいことではありません。

また、正式に認知症と診断されていなくても、加齢に伴う認知機能の低下により、自己注射の手技そのものが難しくなっている方も少なくありません。

Ph.そら
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糖尿病と認知症は、別々の病気のようで、実は深くつながっています。インスリンを使っている方の認知機能の変化には、特に注意が必要です。

まず検討するのは、インスリン以外の治療への切り替え

認知症と診断された、あるいは疑われる方がインスリンを使用している場合、薬剤師としてまず検討するのは、インスリン以外の薬への切り替えができないかということです。理由は、インスリンには低血糖という、重篤で命に関わることもある副作用のリスクがあるためです。認知機能が低下していると、低血糖の症状(冷や汗、動悸、意識障害など)に本人が気づきにくく、対応が遅れるリスクも高まります。

近年は、DPP-4阻害薬、SGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬など、インスリンに比べて低血糖を起こしにくく、効果も期待できる薬が複数登場しています。実際に、こうした薬への切り替えを医師に提案したこともあります。

Ph.そら
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「インスリン=一度始めたら変えられない」というわけではありません。認知機能や生活状況が変わったときは、治療の見直しを検討する価値があります。

インスリンの継続が避けられない場合

病状によっては、インスリンの継続が避けられないこともあります。その場合は、次のような点を確認します。

✅ご家族による注射の補助が可能かどうか
✅介護認定を受けているか、介護サービスが利用できるかどうか

現場でよく見られるのは、訪問看護師による注射です。自己注射自体は可能な状態であれば、訪問ヘルパーに見守ってもらいながら注射を行う、という対応が取られることもあります。

Ph.そら
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「本人だけで注射をするのは不安」という場合も、訪問看護や訪問介護のサポートを組み合わせることで、安全に続けられる方法があります。

体調不良のとき(シックデイ)は特に注意が必要

インスリンを使用している方にとって、風邪などで体調を崩し、食事が十分に摂れない「シックデイ」は、特に低血糖のリスクが高まる場面です。食事量が減っているのに、いつも通りの量のインスリンを注射してしまうと、深刻な低血糖につながることがあります。

こうしたリスクを踏まえても、認知症の方や介護が必要な方については、体調不良時の対応まで見据えて、できるだけ低血糖を起こしにくい薬への変更を優先的に検討することが多いです。

Ph.そら
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体調を崩したときに、いつも通りの対応が難しくなるからこそ、日頃から低血糖のリスクが低い治療を選んでおくことが安心につながります。

薬剤師にできること

訪問薬剤師は、日々の服薬状況や本人の様子を継続的に見ている立場から、「注射の手技が不安定になってきた」「低血糖と思われる様子があった」といった変化に気づきやすい立場にあります。こうした情報を医師に伝え、薬の見直しが必要かどうかを一緒に検討することも、大切な役割の一つです。

また、ご家族が注射の手技に不安を感じている場合は、実際の打ち方を確認しながら、無理のない方法を一緒に考えることもできます。

よくある疑問

薬を変更したら、血糖コントロールは悪くなりませんか?

薬の種類によって効果の強さや特徴は異なりますが、近年の薬はインスリンに劣らない効果が期待できるものも増えています。安全に続けられることを優先しつつ、血糖コントロールの状態は定期的に確認しながら調整していきます。

訪問ヘルパーはインスリン注射をしてもいいのですか?

インスリン注射そのものは医行為にあたるため、原則としてヘルパーが注射を行うことはできません。ただし、本人が自己注射できる場合の見守りや、注射の準備といった補助的な関わりは可能な場合があります。詳しくはケアマネジャーや訪問看護師に確認してください。

→訪問ヘルパーに薬のことを頼める?できること・できないことの最新ルール

認知症の方の低血糖、どんなサインに気づけばいいですか?

冷や汗、震え、動悸といった典型的な症状を、本人がうまく言葉で伝えられないことがあります。代わりに、「急にぼんやりする」「いつもと様子が違う」「反応が鈍くなる」といった変化として現れることも多いため、ご家族には、こうした様子の変化そのものを低血糖のサインとして捉えていただくようお伝えしています。少しでも様子がおかしいと感じたら、我慢せずすぐに対応することが大切です。

まとめ

✅糖尿病のある方は、アルツハイマー型認知症のリスクが2.1倍高いとされています
✅認知症の方のインスリン治療では、まず他の薬への切り替えを検討します
✅継続が必要な場合は、家族の補助や介護サービスの活用を確認します
✅体調不良時(シックデイ)の低血糖リスクを見据えた治療選択が大切です

Ph.そら
Ph.そら

インスリンの管理に不安を感じたときは、一人で抱え込まず、薬剤師やケアマネジャーに相談してください。治療の選択肢は一つではありません。

【参考文献】
・久山町研究(九州大学大学院医学研究院 環境医学分野)「糖尿病と認知症の疫学」
・認知症ねっと「久山町研究とは?~認知症の追跡調査」
https://info.ninchisho.net/mci/k140

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