この記事でわかること
- 脂肪肝がどれくらい身近な状態か
- 「進行しないタイプ」と「進行するタイプ」の違い
- NASHを放置するとどうなるか
- お酒を飲む方の脂肪肝との違い
- 脂肪肝・NASHの治療の考え方
健康診断で「脂肪肝」を指摘されると不安になる方は多いですが、実はそう珍しい結果ではありません。
今回は、脂肪肝と言われたときに、どんな場合は経過観察でよく、どんな場合は注意が必要なのか、その見極め方についてお伝えします。
脂肪肝はかなり身近な状態です
健康診断で脂肪肝を指摘される方は、受診者全体の20〜30%程度とされ、決して珍しいものではありません。特に肥満(BMI25以上)の方では、70%以上に脂肪肝がみられるという報告もあります。
脂肪肝と聞くと縁遠く感じるかもしれませんが、実は高級食材として知られるフォアグラは、ガチョウやアヒルに大量の餌を与えて意図的に肝臓を脂肪化させたものです。人間の脂肪肝も、仕組みとしては同じことが体の中で自然に起きている状態と言えます。
脂肪肝には「進行しないタイプ」と「進行するタイプ」がある
脂肪肝は、大きく「NAFL」と「NASH」の2つに分けられます。NAFL(非アルコール性脂肪肝)は、脂肪が肝臓に溜まっているだけで、炎症や損傷がほとんど進まないタイプで、脂肪肝の多くはこちらに該当します。一方NASH(非アルコール性脂肪肝炎)は、脂肪の蓄積に加えて炎症や損傷を伴い、放置すると肝硬変や肝がんに進行する可能性があるタイプです。NAFLD(非アルコール性脂肪肝疾患)と呼ばれる脂肪肝全体のうち、NASHに該当するのは1割程度とされています。

脂肪肝と言われても、多くはNAFLという進行しにくいタイプです。ただし、一部はNASHという注意が必要なタイプであることも知っておいてください。
NASHを放置するとどうなるか
NASHと診断された場合、5〜10年で5〜20%程度が肝硬変に進行し、肝硬変になった方のうち一定数が肝不全や肝がんに至ることが分かっています。「脂肪肝は放っておいても大丈夫」というイメージを持たれがちですが、NASHに関しては、決して軽視できる状態ではありません。
C型肝炎の治療が進んだことで、脂肪肝の重要性はむしろ高まっている
これまで肝がんの主な原因の一つはC型肝炎でしたが、近年、飲み薬だけでC型肝炎ウイルスを排除できる治療薬が登場し、98%以上という高い治癒率が得られるようになりました。この結果、C型肝炎を原因とする肝がんは今後減少していくと考えられています。
一方で、肥満人口の増加とともに脂肪肝・NASHの患者数は増え続けており、今後は肝がんの原因として、脂肪肝の占める割合が相対的に大きくなっていくと指摘されています。

「肝臓の病気=お酒やウイルス性肝炎」というイメージは、少しずつ過去のものになりつつあります。
お酒を飲む方の脂肪肝は、対応が変わります
ここまでは、お酒をあまり飲まない方に多い「非アルコール性」の脂肪肝についてお伝えしてきました。一方で、お酒を飲む方の脂肪肝については、少し話が変わってきます。
目安として、純アルコール換算で1日あたり男性30g、女性20g以上を継続して飲んでいる場合は、アルコール性の脂肪肝が疑われます。純アルコール30gは、ビール中瓶1本強、日本酒1合半程度に相当します。アルコール性脂肪肝の治療は、食事療法や運動療法ではなく、禁酒がもっとも重要です。
また、最近では「そこそこ飲んでいて、かつ肥満や糖尿病などの代謝的な要因もある」という、非アルコール性とアルコール性の中間にあたる方も少なくないことが分かってきました。こうした方は「MetALD」という、比較的新しい分類で捉えられるようになってきています。お酒を飲む習慣があり、かつ体重や血糖値も気になるという方は、飲酒量の見直しと生活習慣の改善、両方に取り組むことが大切です。
なお、国際的には「非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)」という呼び方から、代謝的な要因をより重視した「MASLD(代謝機能異常関連脂肪性肝疾患)」という呼び方への変更が進んでいます。まだ両方の呼び方が併用されている段階ですが、今後はMASLDという言葉を目にする機会が増えてくるかもしれません。
脂肪肝・NASHの治療は、薬ではなく生活習慣の改善が基本
本記事の執筆時点では、日本国内で承認されている脂肪肝・NASH専用の治療薬はありません。そのため、治療の基本は食事療法と運動療法による生活習慣の改善になります。
具体的には、体重を7%前後減らすことで、脂肪肝の組織学的な改善が期待できるとされています。急激な減量ではなく、無理のない範囲で、食事内容の見直しと適度な運動を続けることが大切です。

薬に頼れない分、生活習慣の改善そのものが一番の治療になります。裏を返せば、自分の取り組み次第で改善が期待できるということでもあります。
薬剤師にできること
脂肪肝そのものを治す薬はありませんが、脂肪肝の背景にある糖尿病、脂質異常症、高血圧といった生活習慣病の薬を服用している方も多くいます。これらの薬をきちんと続けながら、食事療法・運動療法に取り組むことが、結果的に脂肪肝の改善にもつながります。
薬局では、服薬状況の確認と合わせて、無理のない生活習慣の工夫について相談することもできます。健診結果の数値の見方が分からない場合も、遠慮なく相談してください。
何科を受診すればいいか
脂肪肝が気になる場合は、消化器内科や肝臓内科が専門になります。健康診断で指摘された場合は、まずはかかりつけ医に相談し、必要に応じて専門医を紹介してもらう形でも問題ありません。
よくある疑問
お酒を飲まないのに脂肪肝と言われました。なぜですか?
脂肪肝はアルコールが原因のものだけではありません。肥満、糖尿病、脂質異常症など、生活習慣に関連して起こる「非アルコール性脂肪肝」も多く、お酒を飲まない方でも十分になり得ます。
普段からお酒を飲みますが、脂肪肝と言われました。どうすればいいですか?
飲酒量によって対応が変わります。目安を超える量を飲んでいる場合は、まず禁酒・減酒が優先されます。目安の範囲内であれば、食事療法・運動療法が中心になりますが、飲酒量を減らすこと自体も、体重管理や肝臓の負担軽減につながるため、無駄にはなりません。ご自身の飲酒量がどのくらいか分からない場合は、健診結果を持って薬剤師や医師に相談してみてください。
脂肪肝かどうか、どうやって分かりますか?
健康診断の腹部超音波検査や、血液検査の肝機能の数値(AST・ALTなど)から疑われることが多いです。NAFLとNASHを厳密に区別するには、肝臓の組織を調べる検査が必要になる場合もあります。
体重を7%減らすには、どのくらいの期間が目安ですか?
体重や個人差にもよりますが、急激な減量はかえって体に負担をかけるため、半年〜1年程度かけて、無理なく落としていくのが一般的とされています。極端な食事制限より、食事内容の見直しと適度な運動を継続することの方が大切です。
まとめ
✅脂肪肝は健診受診者の20〜30%にみられる、身近な状態です
✅多くは進行しない「NAFL」ですが、一部は進行する「NASH」に該当します
✅お酒を飲む方は、禁酒が治療の基本になるなど対応が異なります
✅NASHは放置すると肝硬変や肝がんに進行することがあります
✅現時点で専用の治療薬はなく、生活習慣の改善が基本です

「脂肪肝」と言われても、必要以上に不安になる必要はありません。ただ、放置していい場合とそうでない場合があることは知っておいてください。気になる方は、一度医療機関でしっかり確認してもらうことをおすすめします。
【参考文献】
・日本消化器病学会・日本肝臓学会「NAFLD/NASH診療ガイドライン2020(改訂第2版)」
https://www.jsge.or.jp/committees/guideline/guideline/pdf/nafldnash2020_2_re.pdf
・日本消化器病学会「脂肪性肝疾患の診断基準に関して」
https://www.jsge.or.jp/news/20260202/
・日本生活習慣病予防協会「脂肪肝/NAFLD/NASH」
https://seikatsusyukanbyo.com/statistics/disease/fatty-liver/

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