認知症の方を介護している家族や施設職員の方が感じる不安のひとつが服薬事故です。
在宅訪問経験約20年の中で、実際に経験した服薬事故の事例をお伝えします。「まさかこんなことが…」と思うような事例も含まれていますが、これらは決して珍しいことではありません。予防策と合わせてお読みください。
外来患者の服薬事故事例
【事例①:PTPシートごと服用】
薬局で薬をもらい自宅でハサミを使い1錠分ずつに切り離していた患者さんの事例です。いつもはきちんと薬を取り出して飲んでいたが、ある日誤ってシートごと服用してしまいました。家族が病院に連絡し内視鏡でとってもらいました。とってもらった薬を見せてもらうと血まみれになっていました。
そんなことある?と思われそうですが実際に過去3例経験しています。薬剤師にとっては常識ですがPTPシートが1錠ずつ切り離せなくなっているのはこの事故を防止するためのものです。
【事例②:一包化の袋ごと服用】
飲み忘れがあるため一包化となった患者さん。その初日の出来事です。家族から薬局に電話があり薬を飲んだ後の空包が見当たらないので本人に確認すると袋ごと飲んでしまっていました。しばらく様子を見て頂き健康被害はありませんでした。薬局での説明不足も問題だったかもしれません。改めて説明しその後は問題なく飲めるようになりました。
【事例③:貼り薬を14枚重ね貼り】
クリニックから電話がありました。今受診している患者の胸に気管支拡張のテープ剤が14枚貼ってあるとのことでした。1日1回貼り替えるタイプの薬でしたが剥がさずに貼り足していたのです。すぐに全て剥がしてもらいました。幸いにも健康被害はありませんでした。改めて薬局で説明しその後は問題なく使用できるようになりました。
在宅での服薬事故事例
【事例④:1日分の薬を一気に服用】
お薬カレンダーにセットした朝・昼・夕の薬を朝にまとめて服用してしまった在宅患者さんの事例です。午後にヘルパーさんが訪問した際に薬の空包を発見したことで発覚しました。
その後の対策として医師に相談のうえ、用法を夕食後にまとめ、ヘルパー訪問時と家族訪問時に服薬介助を行うことで解決しました。
【事例⑤:2回分を服用(糖尿病薬・抗血小板薬)】
家族から薬局に電話がありました。少し目を離した隙に朝の薬を翌日の分まで飲んでしまったとのことでした。薬歴で処方内容を確認したところ糖尿病薬・抗血小板薬など危険な薬を倍量で飲んでしまっていました。
念のため処方医に連絡し指示を仰ぎ経過観察。幸い健康被害は見られませんでした。ご家族が今後は目の届かないところに保管することにしました。
施設入居者の服薬事故事例
【事例⑥:塗り薬を食べてしまった】
施設職員から電話がありました。巡回した時に空になった塗り薬の容器を発見。本人の手と口の周りに塗り薬がついていたことで発覚しました。いわゆる「異食」というものです。
ベッドサイドに置いていたものを今後は目につかないところに置くこととしました。ちなみにその塗り薬はイソジンシュガーパスタという7割が砂糖でできた薬でした。甘かったのかどうかは分かりません。
【事例⑦:隣の人の薬を飲んだ】
食堂にて、目の前に置かれた一包化された薬を隣の人が飲んでしまいました。幸いにも大した薬ではなかったので経過観察とし医師へは事後報告。施設側の対応として薬を机の上に置くのではなく手渡しすることに変更しました。
【事例⑧:ベッドの下に大量の薬】
就寝前の薬を夜間に職員が手渡ししていましたが服薬確認をしていませんでした。その方はいつも「あとで飲む」と言って受け取るので確認を怠っていたのです。ある日部屋清掃の際にその薬がベッドの下に大量に落ちているのを発見。本人に確認すると「何か分からないものを飲みたくなかった」とのことでした。改めてどのような薬か説明した上で今後は職員の目の前で服用してもらうことにしました。
服薬事故を防ぐために
今回ご紹介した8つの事例から学べる予防策をまとめます。
✅ 薬は目の届かない場所に保管する
✅ 服薬はできる限り介護者が立ち会って確認する
✅ お薬カレンダーや一包化を活用する
✅ PTPシートは1錠ずつ切り離さない
✅ 貼り薬・塗り薬の正しい使い方を繰り返し説明する
✅ 施設では薬を机に置かず手渡しで管理する
✅ 薬の変更・一包化開始時は必ず使い方を丁寧に説明する
どんなに注意していても認知症の方の服薬事故を完全に防ぐことは難しいです。でも正しい知識と対策で多くの事故は防ぐことができます。
まとめ
認知症の方の服薬事故は「まさかこんなことが」という形で起きることが多いです。今回ご紹介した事例はいずれも実際に経験したものですが、これでもほんの一例で過去には他にも様々な事例がありました。
薬の管理で不安なことがあればいつでも薬剤師に相談してください。一緒に安全な服薬方法を考えます。これからも服薬事故ゼロを目指して取り組んでいきたいと思っています。

