連日ニュースで「賃上げ」という言葉を聞かない日はありません。政府も経済界も「物価上昇に負けない給与を」と声高に叫んでいます。
でも、待ってください。
私たち薬局薬剤師に届いたR8年調剤報酬改定のベースアップ評価料、対象は「40歳未満」限定だったんです。40歳を1日でも過ぎたら対象外。同じ職場で、同じ仕事をしているのに。
調剤ベースアップ評価料とは?
R8年度改定で拡充された「ベースアップ評価料」は、医療従事者の賃上げを促進するための仕組みです。薬局が算定することで、その収益を職員の給与改善に充てることができます。今回の対象は「40歳未満の薬局薬剤師・事務職員」。40歳以上の薬剤師は制度上、対象外のまま据え置きです。
うちの職場、恩恵を受けるのは1人だけです
正直に書きます。私は42歳の管理薬剤師です。うちの薬局は薬剤師が全員40歳以上。月に2,000枚の処方箋を受け付ける、決して小さくない薬局です。
今回の改定でベースアップ評価料の恩恵を受けられるのは、事務員1人だけ。月約8万円が、その1人に集中します。
その事務員が特別優秀かというと…正直、そうではありません。勤務態度も決して模範的とは言えない。一方で、毎月2,000枚の処方箋を捌き、在宅対応もこなし、患者さんの命に直結する業務をこなしている薬剤師たちは全員対象外。これが現実です。
厚労省に聞きたい。この制度設計で現場はどうしろと?
若手を育てることの大切さはわかります。でも聞きたい。その若手を育てているのは誰ですか?日々の現場を回しているのは誰ですか?40歳を超えても患者さんのために働き続けているベテランたちではないですか?
「年齢で線を引く」という発想自体が、現場の実態を全く見ていない証拠だと思います。賃上げの恩恵が職場内で一部にしか届かないとき、何が起きるか。職場の空気が変わります。ベテランのモチベーションが下がります。チームワークが崩れます。そのしわ寄せは最終的に、患者さんに向かいます。
【論点1】40歳ボーダーは年収格差が最も広がるライン
厚労省は平均値でデータを見ているのでしょうか。中央値で見れば、話は変わってきます。
調剤薬局では30代で年収が510〜589万円まで上昇する一方、ドラッグストアは若手の初任給を高く設定しているため、30代後半〜40代前半で年収が逆転するケースが珍しくありません。「40歳未満=低年収」という前提自体が、実態と乖離している可能性があります。
平均値は高年収層に引っ張られます。現場の実態を反映するなら中央値で見るべきではないでしょうか。その視点が制度設計に欠けていると感じます。
【論点2】20〜30代の管理薬剤師はどうなる?
20〜30代の管理薬剤師にも同情します。役職手当の相場は月3〜5万円。責任と業務量は一般薬剤師より明らかに重いのに、ベースアップ評価料の対象外になることで一般薬剤師との実質的な給与差がさらに縮まる可能性があります。
管理薬剤師を目指すモチベーションが下がってしまわないか、現場の人間として心配しています。経営者・法人役員を対象外にするのは理解できます。でも勤務薬剤師と管理薬剤師は、年齢に関係なく全員対象にするべきではないでしょうか。
あなたの職場はどうですか?
今回の改定、皆さんの職場ではどんな反応がありましたか?同じような状況の薬局は全国にたくさんあるはずです。現場の声が制度を変える力になります。ぜひコメントで教えてください。
将来を担う若手が大切なのはわかります。でも、これまでも若手育成に注力し現場を支えてきたベテランにも、夢を見させてください。
